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異文化と異次元の旅人

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2008年07月05日 (土)

ローカル大学化する日本の大学

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6月2日付けの日経新聞教育欄で、国際基督教大学の鈴木典比古学長が、大学の学部改革に必要な「4つの仕掛け」について述べている。

第1の仕掛けは、授業科目の番号化である。1・2年生が履修する科目は100番台、2・3年生用の中級科目は200番台、3・4年生用の上級科目は300番台というぐあいに、カリキュラムを階層的に構造化する提案。

第2の仕掛けは、(1)シラバス、(2)試験を初めとする種々の評価、(3)学生による教員の授業評価、(4)GPA(グレード・ポイント・アベレージ)という4つの小道具を連動的に運用した授業行程管理の提案。

第3の仕掛けは、対話型授業促進の提案。大人数クラスは小グループに分けて博士課程大学院の授業アシスタントによるグループディスカッション指導を活用するとしている。

第4の仕掛けは、学期途中での登録科目放棄を許さない科目登録制導入の提案。見かけ上の履修登録抹消を許さないことで、教育の質保証を目指し、日本の大学における「成績インフレ」を防ぐとしている。

この提案を読んで、私はひどく失望してしまった。提案の中身に問題があるわけではない。どれも理にかなった内容で、日本の大学での採用には私も大賛成である。ただ、これらの提案のすべてが、私が留学した1980年前後のアメリカの大学では、既にずっと以前から定着していた制度である。それをあたかも大改革であるかのごとく宣伝されても、何ら先進性を感じない。

国際基督教大学といえば、日本で最も国際化された一流大学のひとつである。重い腰を上げて組織の改革に取り組もうとする真摯な姿勢は評価するが、日本を代表するエリート大学ですら、大改革の中身は30年以上前のアメリカの後追いでしかない。

実は、同じような改革を試みている大学は他にもたくさんある。みな大々的に宣伝しているが、どれも30年前のアメリカにようやく追いついたに過ぎない。なかには、大学院生TAを単なる雑用係として使い走りさせたり、ユニバーサル化を目指したはずのGPA制度で標準を無視して独自の数値化を導入したために、学生の成績が将来不利に解釈されかねない事態を招いたり、新たな問題が生じているケースも少なくない。日本の大学の将来を考えると、暗澹たる不安を感じる。

現時点でも日本の大学は世界的に見れば決して超一流ではない。英紙タイムズによる世界の大学ランキング2007年では、天下の東京大学でさえやっと17位である(朝日新聞2008年4月1日)。その他の大学で100位以内に入っているのは、25位の京大、46位の阪大、90位の東京工業大学だけだ。東北大学はギリギリおよばず102位。

もちろん、ランキングだけで大学の価値を判断できないし、ランキングそのものも非英語圏には不利だとか、文系軽視、さらに、そもそも大学をランキング化出来るのかという批判には一理ある。しかし、私の感覚としては実態とそれ程離れたランキングでもないし、批判の多くは若干負け犬の遠吠えに聞こえなくもない。もし「人文・社会科学系の力を十分反映」すれば、残念ながら、日本の大学のランキングはさらに低くなるかもしれない。

現在世界の大学ランキングのトップグループに君臨しているのは、ハーバード大学、エール大学などのアメリカ勢とオックスフォード・ケンブリッジ両大学のイギリス勢である。これほどの有名大学でなくとも、アメリカでトップ50位前後までの大学なら、研究実績、教育内容、教授陣など世界に誇れる何かを持っている。東大・京大など日本の一流大学から留学してくる学生・研究者も多い。

英米の大学が優秀なのは、アメリカ人やイギリス人が特に優秀だからではない。アメリカの大学には、教授陣、研究者、学生も含めて、ヨーロッパ、中国、インド、中南米など世界中から優秀な人材が集まっている。私が最初に留学したアメリカの大学の物理学科では、教授陣を出身国・人種別に分けると、半分近くがユダヤ系アメリカ人で、次にインド人、イタリア人、ギリシャ人と続く。非ユダヤ系のアメリカ人は1~2人しかいなかった。他の大学も出身国の組み合わせに違いはあれ、似たり寄ったりなものである。要するに、アメリカの大学は、世界中から優秀な人材を集めて力を発揮させるような組織・制度が優れているのである。

日本の研究者や学生にも優秀な個人は多い。しかし、大学という組織・制度が旧態依然で貧弱であるため、潜在能力を生かし切れていない。日本という国が経済力で存在感を示した時代は、それにつられて日本の大学も、ある程度の存在感を示したかもしれない。しかし、今後相対的に日本の存在感が低下するにつれ、日本の大学は世界の周辺に追いやられ(marginalize)、アジアの中のローカル大学という位置づけが定着するだろう。日本の大学が世界で一流として認められるためには、英米の大学に追従するだけでなく、英米の大学を越えるような組織・制度そして考え方の大変革が必要である。

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22:00:00   大学論  | コメント(2)  | トラックバック(0)

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コメント

ありがとう

tarowho様、
メールありがとうございました。
ありました、迷惑メールフォルダーに。
丁寧に書いてくれたのに、迷惑フォルダーに転送されて
読めなかったのは残念。今度また有馬に行けば
あのパスを使います。
ありがとう、それでは、
また木曜日のお菓子の会で。

しも  [URL] #-  | 2008年07月23日 09:42:18  [修正]

有馬情報ですね

“しも” Frost 様
私的なメールへのお返事だと思いますが、コメントありがとうございます。
内容的には、有馬旅行のことを書いた
http://tarowho.blog95.fc2.com/blog-entry-109.html へのコメントのようですね。
また有馬に行きたくなりました。
その時には、しもちゃんの情報活用させていただきます。^^
多分秋には有馬へ一泊旅行がありそうなので。

Taro Who?  [URL] #DFBJiU5Y  | 2008年07月23日 17:54:56  [修正]


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Taro Who?/フウタロウ

管理人 : Taro Who?/フウタロウ
理系研究者からビジネス現場の通訳・翻訳・マーケティングサポートを経て、現在はもっぱら大学・大学院で理系英語・翻訳・プレゼン・ライティング等を教える。また、理系英語教育プログラム、脳科学的アプローチに基づく英語学習、通訳訓練法、通訳・翻訳理論を研究する。しばしば仕事はそっちのけで、旺盛な好奇心のおもむくまま、あらゆるジャンルに首をつっこみ雑文を書く。砂漠とロッキー山脈が大好きだが、最近はとんとご無沙汰。もっぱら仙人生活を送っている。でも、パーティーとおしゃべりは嫌いじゃない。日本生まれ、日本在住。20代から15年間アメリカで過ごす。

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