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異文化と異次元の旅人

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2008年03月28日 (金)

坊ちゃんの日本語

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先日のコラムで、優れた文学者が書く文章であっても、そのすべてが「正しい日本語」とは限らないということを指摘した。この場合「正しい日本語」というのは、実務文の基本に則った、文法的、論理的、語法的に正しい日本語文のことである。

そもそも日頃我々がしゃべったり書いたりする日本語は、しょっちゅう論理の流れが乱れ、視点が変わり、よほど注意していないと、主述が一致しなかったり、修飾関係が不明瞭になったりする。ちょうどぴったりの例が、前田尚作著「日本文学英訳分析セミナー」で取り上げられているので紹介しよう。夏目漱石の「坊ちゃん」で、主人公の坊ちゃんが心中で毒づく場面である。

金は借りるが、返すことはごめんだという連中はみんな、こんなやつらが卒業してやる仕事に相違ない。(『坊っちゃん』39)
このままだと、「連中=仕事」になり、論理的に矛盾している。正式な実用文では許されないのだが、大学院生や若い研究者に作文させてみると、結構こういう間違いを犯す。本人は指摘されるまで気がつかない。

ちなみに「日本文学英訳分析セミナー」では、こういう論理的矛盾を含んだ日本語が、一流の英訳者によってどういう英語に翻訳されたかが示され、それに前田先生が解説を加えている。
日常生活で、われわれがしゃべったり書いたりする日本語には、舌っ足らずな表現や矛盾した文がたくさん含まれている。推敲を重ねたはずの小説の文章も例外ではない。……ところが英訳者達は敏感に反応する。われわれにとって何の違和感も起こらない文も、彼らの論理に合わせて再構成してから訳すのである。……
It was obvious that these kids, when they left school, were going to turn into the kind of people who borrow money and refuse to pay it back. (Turney 54)
本書には他にも興味深い例や解説がたくさん掲載されているので、英訳に興味がある人は一読されることをお勧めする。

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プロフィール

Taro Who?/フウタロウ

管理人 : Taro Who?/フウタロウ
理系研究者からビジネス現場の通訳・翻訳・マーケティングサポートを経て、現在はもっぱら大学・大学院で理系英語・翻訳・プレゼン・ライティング等を教える。また、理系英語教育プログラム、脳科学的アプローチに基づく英語学習、通訳訓練法、通訳・翻訳理論を研究する。しばしば仕事はそっちのけで、旺盛な好奇心のおもむくまま、あらゆるジャンルに首をつっこみ雑文を書く。砂漠とロッキー山脈が大好きだが、最近はとんとご無沙汰。もっぱら仙人生活を送っている。でも、パーティーとおしゃべりは嫌いじゃない。日本生まれ、日本在住。20代から15年間アメリカで過ごす。

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