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異文化と異次元の旅人

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2007年08月10日 (金)

Far-out

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先日、1981年にヒットした Marty Balin の "Hearts" を大学生達に聞かせたら、圧倒的に「古臭い」という感想が返ってきたという話をしたが、そういえば、1980年にアメリカに渡ってから知り合ったアメリカ人の学生達も、自分の親世代の音楽や文化を小馬鹿にするようなことばかり言っていた。ところが、その年代こそ、今私が日本で教えている学生達の親と同世代なのだ。

アメリカでの学生生活に慣れた頃、私はキャシーという女子学生と親しくなった。20才になったばかりの彼女は、ジャーナリズム学科で映画(film)を専攻(major)する3年生(junior)。少しつっぱっているがチャーミングで、抜群にプロポーションが良かった。その点には、私の兄貴分だった日本人学生もぞっこんだった。

ただ、日本人よりもずっと自由に振る舞うアメリカ人学生の中でも、彼女は飛び抜けて「ぶっ飛んで」いた。ショートヘアで、パンクのように反抗的なファッションや濃い化粧をしたり、派手な毛皮を身につけ、アート専攻の「変わった」連中と付き合い、「怪しい」パーティーに出入りしていた。それに何より、わがままし放題だった。同じくジャーナリズム学科で仲の良いインテリ女学生ケイによると、"She is far-out." ということになる。ケイはよく、"You guys are a mismatch."と私に忠告していた。

私と会う時のキャシーは、いつもビール臭く、たばこ臭かった。バーに行く時は財布も持たずに外出し、勝手にビールを注文して、私に「早く支払え」とせかす。私も貧乏学生だったが、とりあえず毎月決まった額の奨学金が入るので、彼女にとっては「財布代わり」だったのかも知れない。今から思えば、調子のいい女だった。

しかし、彼女は根っからの悪女というより、ただ心のまま自由に生きていたようだ。嘘や隠し事もするが、バレるとあっさりと認める。そういう意味では非常に「素直」だった。いっしょに映画や音楽、ポップカルチャーの話をしていると、時間の経つのも忘れて楽しい。彼女からはアメリカについて、「普通の留学生活」をしていては知り得ないようなことをたくさん習った。

さらに、彼女には可愛いところもあり、授業で出された課題の小論文などを書くと、直して欲しいと私に見せに来た。外国人の私に英作文のチェックをお願いするジャーナリズム専攻学生というのもちょっと変だが、彼女も「普通」の多くの女性達と同じく、知的に尊敬できる男にリードされたいという願望があったようだ。私がその役割を果たせていたのかどうかは定かではないが。

キャシーにはよくパーティーやバーに連れて行かれた。その時の音楽はたいてい New Age とか Punk で、そういう音楽を好むのはほとんど白人ばかりだ。彼らは、音楽に合わせて体中のエネルギーを発散させて踊るのだが、その「ダンス」は、ただぴょんぴょんジャンプしているだけという印象しかない。音楽もダンスもそして雰囲気も、黒人のパーティーとはまったく異なっている。それでも、当時の若い彼らは、自分たちこそ音楽シーンの最先端にいるという自負に満ちていた。

キャシーは、自分の親たちがラジオの"easy listening" チャンネルでよく聞いている、instrumental 中心の癒し系音楽を "muzak" と呼んで馬鹿にしていた。要するに、"music" 以下の代物だという訳だ。

超わがままな彼女とは、周りが予想したとおり、半年も経たないうちに、すったもんだの末別れ、卒業してからの消息も知らない。あれから25年以上も経って、今では案外「音楽の趣味が悪い」と子供達におばさん扱いされながら、ラジオで "oldies"(なつメロ)を聞いているかも知れない。みんなそういう運命をたどるのだ。何だか急に現在の彼女を見てみたくなったが、きっと思い出は壊さない方がいいだろう。彼女にはいつまでも "far-out"(ぶっ飛んだ)のままでいて欲しい。

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22:00:00   アメリカ留学記  | コメント(0)  | トラックバック(0)

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Taro Who?/フウタロウ

管理人 : Taro Who?/フウタロウ
理系研究者からビジネス現場の通訳・翻訳・マーケティングサポートを経て、現在はもっぱら大学・大学院で理系英語・翻訳・プレゼン・ライティング等を教える。また、理系英語教育プログラム、脳科学的アプローチに基づく英語学習、通訳訓練法、通訳・翻訳理論を研究する。しばしば仕事はそっちのけで、旺盛な好奇心のおもむくまま、あらゆるジャンルに首をつっこみ雑文を書く。砂漠とロッキー山脈が大好きだが、最近はとんとご無沙汰。もっぱら仙人生活を送っている。でも、パーティーとおしゃべりは嫌いじゃない。日本生まれ、日本在住。20代から15年間アメリカで過ごす。

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