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異文化と異次元の旅人

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2007年05月04日 (金)

恋の話(1) 続きの続き

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大学に入って一年ほどしてから付き合い始めた彼女は、同じクラブの中でも演劇に関わる活動をしていた。次回の上演では、映画でマリリン・モンローが演じた『バス・ストップ』の主役に抜擢されている。そして、ラブシーンもあるらしい。ラブシーンといっても実際にキスをする訳ではなく、抱き合って顔を寄せ合い、それらしく見せるだけなのだが、それとて大変なことだ。俺たちでさえ抱き合ったことなんてないのに、何で他の男と抱き合ってキスの真似事をするのだ!

演技に過ぎないと分っていても、自分の心を納得させるのは難しかった。「じゃ、私がこの役を降りればいいの?」困った彼女はこう聞き返すが、ずっと以前から決まっている配役を変更できるはずもない。相手役の男もとんだとばっちりだ。同じクラブ仲間の私が見ていると、遠慮して演技しにくそうだった。

そして、上演の日がやってきた。私は同じ日に自分の試合があって見に行くことが出来なかったが、見に行けなかったのは、幸いだったのかも知れない。

ただ、一年に一度しかない彼女の舞台を応援できないのは残念だ。そこで、考えた。離れているからこそ彼女への気持ちを届けよう。妹の知り合いにフラワーショップのオーナーがいるという。有り金はたいて薔薇を買えるだけ買ってもらい、その花束を妹に届けてもらった。

舞台が終わって、衣装も化粧もそのままの彼女に妹が30本の薔薇の花束を渡すと、彼女は大事そうに抱えて涙ぐんでいたという。そして、打ち上げにも参加せず、花を枯らしたくない一心で真っ直ぐ家に帰った。

自分もちょっと大人の男になったような気がした。

さて、彼女とその後どうなったかって?私がいまだに独身である事実からして、彼女とはいつか別々の道を歩むことになった訳だが、やはり、私が未熟で彼女を包み込んであげられなかったことが、その大きな理由だろう。

その後、彼女は、多くの女性が憧れるキャリアを歩み、素敵な男性と結婚して幸せに暮らしている。私もそれなりに人生経験を積み重ね、少しは女性に対する理解も深くなり、今ならもう少しましな恋愛が出来そうなはずだが、そう上手く行かないのが人生だ。真剣勝負を挑むタイミングというのは計画して現れるものではない。

彼女との関係は、今なら中学生の恋の真似事のようなものでしかなかったかも知れない。しかし、その後のどんな恋愛にも劣らず、宝石のように大切な思い出として人生のアルバムの中に残っている。それはきっと、惰性に流されず、心のつながりを求めて真剣に向き合ったからだろう。

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プロフィール

Taro Who?/フウタロウ

管理人 : Taro Who?/フウタロウ
理系研究者からビジネス現場の通訳・翻訳・マーケティングサポートを経て、現在はもっぱら大学・大学院で理系英語・翻訳・プレゼン・ライティング等を教える。また、理系英語教育プログラム、脳科学的アプローチに基づく英語学習、通訳訓練法、通訳・翻訳理論を研究する。しばしば仕事はそっちのけで、旺盛な好奇心のおもむくまま、あらゆるジャンルに首をつっこみ雑文を書く。砂漠とロッキー山脈が大好きだが、最近はとんとご無沙汰。もっぱら仙人生活を送っている。でも、パーティーとおしゃべりは嫌いじゃない。日本生まれ、日本在住。20代から15年間アメリカで過ごす。

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